塾長ブログ

2025/03/10
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国際宇宙ステーションのエネルギー源は太陽光パネルだけでいいのか?— ペルチェ素子の可能性を考える

国際宇宙ステーション(ISS)のエネルギー供給は太陽光パネルによってまかなわれています。
宇宙空間では太陽光が豊富に降り注ぎ、地球の大気や天候の影響を受けないため、非常に効率の良いエネルギー源となるのです。


しかし、宇宙空間には「温度差」という興味深い特徴があります。
太陽の当たる部分は約120℃、影になる部分は約-100℃まで冷え込むのです。


ここで気になるのが、「ペルチェ素子(熱電変換素子)を使えば発電できるのではないか?」というアイデアです。
確かに温度差を利用する技術は存在し、地球上でも一部の発電装置に活用されています。
では、ペルチェ素子は宇宙で有効なエネルギー源になりうるのでしょうか?



① そもそもペルチェ素子とは?


ペルチェ素子(熱電素子)とは、温度差を電気エネルギーに変換する装置のことです。
具体的には、ゼーベック効果という物理現象を利用しており、一方が高温、もう一方が低温になったときに電圧が発生し、電気を取り出すことができるという仕組みです。


この技術はすでに実用化されており、例えば:

  • ・火力発電所の排熱回収
  • ・車の排気ガスからの発電
  • ・人工衛星や探査機の放射性熱発電(RTG) などに利用されています。


② 宇宙空間ではペルチェ素子が有効なのか?


宇宙には大きな温度差があるため、ペルチェ素子が有効に働くのでは?と考えるのは理にかなっています。
ただし、いくつかの技術的な問題があり、現在の宇宙ミッションではペルチェ素子は主流の発電方法として採用されていません。
その理由を探ってみましょう。


★(1) 確かに温度差は大きいが、熱の伝達が難しい

ペルチェ素子を利用するには、高温側と低温側にしっかりと熱を伝達する必要があるのですが、宇宙空間ではこれが難しいのです。


■ 地球上と宇宙の違い

  • ・地球上の場合:大気があるため、対流や伝導によって熱が伝わる。
  • ・宇宙空間の場合:真空であるため、熱は放射(輻射)によってしか伝わらない。


つまり、温度差があっても、その熱を効率よくペルチェ素子に供給する手段がないという問題があるのです。



★(2) 発電効率が低い


ペルチェ素子は確かに熱を電気に変換できますが、効率が低い(一般的に5〜10%程度)という欠点があります。
それに比べ、太陽光パネル(ISSで使用されているもの)の変換効率は
30%以上
と圧倒的に優れています。


このため、宇宙で発電する手段としては、ペルチェ素子よりも太陽光パネルの方が圧倒的に有利なのです。



★(3) 廃熱の処理が難しい


ペルチェ素子の発電には、温度差を維持することが不可欠ですが、
宇宙空間では「熱を逃がすことが難しい」という新たな問題が発生します。


ISSのような宇宙船では、太陽に当たる部分がどんどん加熱され、影になった部分は冷え続けます。
しかし、ペルチェ素子を利用するには、熱を放出して温度をコントロールする仕組みが必要です。
宇宙では熱の放出が「放射(輻射)」しかないため、熱を効率よく捨てる方法を確立しないと、ペルチェ素子自体の動作が不安定になるのです。



③ では、ペルチェ素子は宇宙では使えないのか?


完全に「使えない」というわけではありませんが、「ISSの主電源として採用するには向いていない」というのが現状です。
しかし、一部の用途では可能性があります。


(1) 廃熱の回収には使えるかも?

ISSの機器から発生する廃熱をペルチェ素子で回収して発電する、というのは理論的に可能です。

例えば:

  • ・宇宙飛行士の宇宙服の冷却装置
  • ・機器の排熱を利用した補助電源


このように、「メインの電源としてではなく、サブの補助電源として利用する」方法は十分考えられます。


(2) 深宇宙探査機では利用できるかも

例えば、太陽から遠く離れた木星探査機や土星探査機では、太陽光パネルの発電が難しくなります。
そのため、放射性熱電発電(RTG)が使われていますが、ペルチェ素子の技術が向上すれば、
「RTG+ペルチェ素子」の組み合わせで発電効率を向上させることができるかもしれません。



④ まとめ


ペルチェ素子は温度差を電気に変換できるが、宇宙ではいくつかの問題がある

  • ・熱の伝達が難しい(真空なので対流や伝導がない)
  • ・発電効率が低い(5〜10%)
  • ・熱を逃がすのが難しく、温度差の維持が困難


ISSの主電源としては太陽光パネルが圧倒的に有利

  • ・太陽光パネルの変換効率は30%以上で安定している。
  • ・太陽エネルギーが常に供給される環境ではペルチェ素子を使うメリットが少ない。


ただし、一部の用途ではペルチェ素子が活躍できる可能性がある

  • ・宇宙服の冷却装置や機器の排熱回収など、補助電源としての活用
  • ・深宇宙探査機(木星以遠)での発電補助として利用


⑤ 結論:ペルチェ素子は「ISSの主電源」にはならないが、使い道はありそう!


ペルチェ素子は、「温度差を利用する」という点では宇宙向きの技術のように思えますが、現時点では主電源としては使いにくいのが実情です。


しかし、補助電源や深宇宙探査などの用途であれば、今後の技術進歩によって活躍の場が広がる可能性は十分にあるでしょう!

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