宇宙では熱伝導が起こらない？— 太陽の熱はどうやって地球に届くのか？
宇宙には「空気」がないことは、ほとんどの人が知っているでしょう。
しかし、それによって「熱の伝わり方」も地球上とはまったく異なるということを、意識したことはありますか？
例えば、「太陽の熱が地球まで伝導で届いている」 と勘違いしている生徒も少なくありません。
実際のところ、宇宙空間では 「熱伝導」 はほぼ起こりません。では、一体どのようにして太陽のエネルギーが地球に届いているのでしょうか？
今回は、「熱伝導が存在しない宇宙空間における熱の伝わり方」について考えてみましょう。
① そもそも「熱伝導」とは何か？
地球上で「熱が伝わる方法」には、大きく分けて 3つのメカニズム があります。
■1. 熱伝導（伝導）
- ・物質を介して熱が伝わる現象。
- ・例：スプーンを火にかけると、持ち手の部分まで熱くなる。
熱伝導では、物質の分子や原子が振動しながら熱を伝えていく ため、物質が存在しないと起こりません。
■2. 対流
- ・液体や気体が動くことで熱が移動する現象。
- ・例：お湯を沸かすと、下の方が温まり、対流が起こる。
対流は、液体や気体が移動することで熱を運ぶため、気体のない宇宙空間では発生しません。
■3. 放射（輻射）
- ・電磁波（赤外線や可視光線など）の形で熱が伝わる現象。
- ・例：太陽の光を浴びると暖かく感じる。
この放射こそが、宇宙空間で唯一熱を伝える手段 です。
② 宇宙では「熱伝導」や「対流」が起こらない
地球上では、熱は 「伝導」や「対流」 によって伝わることがほとんどです。
しかし、宇宙空間には ほぼ物質が存在しないため、伝導も対流も発生しません。
例えば、地球の大気圏内では、太陽の光（放射）を受けた空気が温まり、その空気が対流することで温度が変化します。
しかし、宇宙空間では 気体や液体がほとんどないため、対流するものが存在しない のです。
③ では、太陽の熱はどうやって地球に届くのか？
答えは 「放射（輻射）」 です。
太陽は、膨大な量のエネルギーを 電磁波（赤外線・可視光線・紫外線など） の形で宇宙空間に放出しています。
これが、私たちが感じる「太陽の熱」の正体です。
★太陽の放射線が地球を温める仕組み
- １．太陽から電磁波が放出される（赤外線・可視光線・紫外線 など）
- ２．宇宙空間を伝わり、地球に到達
- ３．大気や地表が電磁波を吸収し、熱エネルギーに変換
- ４．その熱が地球全体に広がる（対流・伝導）
つまり、太陽の熱そのものが宇宙空間を伝わってくるのではなく、電磁波として届いたエネルギーが、地球に当たることで熱に変換されている のです。
④ 太陽光を受ける物質によって温度が変わる
宇宙空間では、熱は「放射」によってしか伝わらないため、どのような物質が太陽光を受けるかによって温度の変化が異なります。
例えば、
- ・金属（アルミなど）は熱を吸収しやすい
- ・白いものは光を反射しやすく、黒いものは吸収しやすい
- ・宇宙服は太陽光を反射する特殊な素材を使っている
このように、物質の性質によって受け取る熱量が変わってくるため、宇宙空間では「何に光が当たるか」が重要になります。
⑤ まとめ
✅ 宇宙空間では熱伝導や対流が発生しない
- ・物質がないため、熱を伝えるための分子の振動や移動が起こらない。
- ・地球上で起こる「熱伝導」や「対流」は、宇宙ではほぼゼロ。
✅ 太陽の熱は「放射（輻射）」として届く
- ・太陽からのエネルギーは 電磁波（赤外線・可視光線・紫外線） の形で地球に届く。
- ・大気や地表に当たることで熱に変換される。
✅ 宇宙では熱の伝わり方が異なる
- ・宇宙空間では「何に光が当たるか」で温度が大きく変わる。
- ・宇宙服や人工衛星の表面素材は、熱の吸収を抑える工夫がされている。
結論：「太陽の熱」は宇宙を伝わらない！
「熱」は空気や物質がなければ伝わりません。
つまり、もし太陽の熱が「熱伝導」で伝わるのであれば、地球まで届くはずがないのです。
では、どうやって太陽のエネルギーが届いているのか？
その答えは 「放射（輻射）」として電磁波の形で届き、物質に当たることで熱が生まれる」 ということです。
これは、地球の気候や宇宙での活動を考える上でも非常に重要なポイントです。
ぜひこの機会に、「熱の伝わり方」を正しく理解し、宇宙空間での物理現象の面白さを感じてもらえたらと思います！
